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BSI(英国規格協会)は2015年に組織レジリエンスの評価指標「Organizational Resilience Index」を開発し、これに基づいて行った調査結果を「BSI Organizational Resilience Index Report」として、2017年から毎年発表している(注1)。2021年3月にその2021年版が発表されたので、本稿ではこれを紹介したいと思う。なお2019年版が同年11月に発表された後に、発表時期が3月にずれたため、2020年版を飛ばして2021年版となっている。したがって今回紹介する2021年版が、2017年版から数えて4回目の報告書ということになる。

なお本報告書は下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。
https://www.bsigroup.com/our-services/Organizational-Resilience/Organizational-Resilience-Index/
(PDF 63ページ/約16.4MB)

本報告書の基となっている調査は、2020年の8月、9月に英国、米国、アイルランド、オーストラリア、中国、インド、日本の515組織を対象として行われたとのことであるから、当然ながら新型コロナウイルスのパンデミックによる影響が反映されたものとなっている。

2021年度版をダウンロードしてまず驚いたのは、報告書の形式が大きくリニューアルされたことである。従来はA4縦型で20〜30ページ程度だったが、2021年版ではプレゼンテーションスライドのような横型で63ページとなっており、紙面のレイアウトやデータの見せ方が大幅に変わっている。

これは完全に筆者の推測であるが、2020年12月にBSIの最高責任者(Chief Executive)がHoward Kerr氏からSusan Taylor Martin氏に交代した影響かもしれない。確か2016年5月だったと思うが、Howard Kerr氏が来日されたことがあり、その際に英国大使館で開催されたセミナーでは、Organizational Resilience Indexに関して自ら講演され、質疑にも積極的に回答されていた。このような経緯から、同氏はこのプロジェクトに関してかなり積極的に関与していたのではないかと推測している。そして同氏がBSIから退いたところで、新しい最高責任者のもとで新たな方針に基づいてまとめられたのではないだろうか。

そして、データの見せ方が変わったことを最も強く印象づけるグラフの一つが図1である。これは組織のレジリエンスを評価する16の指標(グラフの周囲に書かれているもの)に関する評価結果の平均値を、組織の売上規模ごとに色分けして表示したものである。紫色が全体の平均値、最も内側の水色が売上500万〜5000万ドル、緑色が2億5100万〜5億万ドル、オレンジ色が10億ドル以上の組織における平均値を示している(注2)。

売上規模が小さい組織(最も内側の水色)の方が全体的に評価が低くなるのは何となく分かるとしても、最も売上規模が大きいカテゴリーの平均値(オレンジ色)が中堅(緑色)を全体的に下回っていることに関しては、意外だと感じられる方も少なくないのではないだろうか。

画像を拡大 図1. 組織のレジリエンスの評価結果(売上規模別)(出典:BSI / Organizational Resilience Index Report 2021)

図1のようなレーダーチャート自体は、BSIが2015年にOrganizational Resilience Indexを発表したときから用いられているので、特に新しいということはない。しかしながら今回のように、レーダーチャート上で異なる属性のデータが比較されたのは今回が初めてである。