画像を拡大 (出典:UNDRR / Hazard Definition & Classification Review Technical Report 表紙(一部改変))

先週に続いて今回も国連防災機関(United Nations Office for Disaster Risk Reduction:略称UNDRR)(注1)から発表された報告書を紹介させていただく。先週の記事と関連する部分が多いので、適宜参照しながらお読みいただければと思う(注2)。

2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(略称 SDGs)や、同じく2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」(注3)には、あるべき姿や考え方だけではなく、2030年までの達成を目指す具体的な目標や評価指標が設定されており、それらに対する進捗(しんちょく)が継続的にモニタリングされている。特に「仙台防災枠組」に関しては、先週の記事でも紹介させていただいた通り、「Sendai Framework Monitoring database」というシステムがUNDRRによって運営されており、目標に対する進捗に関するデータが各国から登録されるようになっている。

ところが、地震や津波、洪水など災害をもたらし得る「ハザード」(注4)の分類方法や用語、定義などが統一されていないために、このような進捗管理に関する業務で実務的な問題が発生していたという。

具体例を挙げると、前述の「Sendai Framework Monitoring database」において、登録されたハザードの種類が膨大になってしまったという問題があった。このデータベースの運用が始まったときには、74種類のハザードが設定されていた。しかしその運用においては、各国の事情に応じて新たなハザードを追加できるようになっており、またハザードに関する統一的な基準がなかった。その結果、わずかに異なる名称や異なる言語で追加されたハザードや、個々の国で決められた仕様に従って追加されたハザードなども加わり、2019年10月の時点で1200種類のハザードが登録されていたという。このような状況では二重集計や過少計上などが発生しかねず、データの集計が正しく行われなくなる可能性がある。

また、災害による損失のデータを収集・集計しているデータベースが既にいくつか存在しているが、それらの間でハザードの分類方法が一貫していないという問題もある。そのようなデータベースの代表的なものとしては、「仙台防災枠組」の目標に対する進捗管理に関連してUNDRRが運用している「DesInventar」(注5)や、ベルギーにある災害疫学研究センター(The Center for Research on the Epidemiology of Disasters:略称 CRED)が運用している「EM-DAT」(注6)などがある。また世界銀行や大手再保険会社、各国の政府機関や研究機関なども災害に関するデータを蓄積している。しかしながらハザードの定義や分類方法が異なるため、これらの複数のデータベースにまたがる集計や比較がしにくい状況になっているという。