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一般的に企業のレジリエンスについて考える場合、その主な対象としては事故や災害などによる物的、人的、および金銭的損失などを考える方が多いであろう。しかしながら実際には、取引先との信頼関係やブランドイメージ、企業のレピュテーションといった、いわゆる無形資産に対して発生する損失も考慮しなければならない。今回はそのような問題意識に基づいて、レピュテーションに関するリスクマネジメントに関する調査報告書を紹介させていただきたいと思う。

世界有数のコンサルティングファームであり保険ブローカーのWillis Towers Watson(注1)は、2021年1月に「Global reputational risk management survey」を発表した。これは同社が2020年9月から11月にかけて、企業の経営者やリスクマネジメント担当者200人を対象として行ったアンケート調査の結果をまとめたもので、彼らがレピュテーションに関するリスクマネジメントに対して抱いている問題意識や、直面している課題などを探る調査となっている。

回答者の役職別の内訳は、54%がリスクマネジメント担当者、15%が経営層(注2)などとなっている。業種別に見ると、金融サービスと製造業が同率で17%と目立つが、これ以外の業種はおおむね横並びである。なお地理的な内訳については、自社が事業を営んでいる地域を複数回答させているので、回答者自身の所在が分かりにくいが、欧州59%、アジア太平洋地域58%、北米47%、中南米32.5%、中東25.5%、アフリカ22.5%となっている。

図1は、レピュテーションに対する損失が発生した結果としてどのような影響があったかを尋ねた結果である。最も多いのは「Loss of income, reduced customer base」(売上や顧客の減少)で86%となっている。これはもちろん企業やブランドのイメージ低下による売上減などであろう。また、人事に関する2項目、すなわち「Loss of talent」(有能な人材の損失)と「Less attractive as employer」(雇用者としての魅力の低下)がいずれも過半数となっているのも興味深い。

画像を拡大 図1. レピュテーションに対する損失がもたらした影響(複数回答)(出典:Willis Towers Watson / Global reputational risk management survey)

ここで注目すべき項目の一つは「Lowered ESG rating」(ESG格付けの低下)であろう。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略であり、これらの観点から企業を評価して投資対象を選ぶ投資手法は「ESG投資」と呼ばれている。

筆者としては、ESG投資はまだあまり普及していないと認識していたので、昨年の時点でESG格付けの低下という回答が3割近くあったことは意外であった。サステイナビリティに対する関心の高まりとともに、今後はESG投資の存在感も高まってくると考えられるので、企業のレピュテーションがESG格付けに与える影響は今後ますます注目されるであろう。